やみくもに成功者の真似をするのではなく、自分にとって本当に必要な習慣を身につけるのが肝心。書籍『人生を変える習慣のつくり方』レビュー
一年の始まりに手帳を買い替えたり、文房具を新調したりという人も多いと思います。一説によると、心機一転気持ちを切り替えるには、寒い冬よりも春先(年度変わりの時期)の方が良いとの話もありますが、やはり年が改まるタイミングは気持ちが改まるものです。
そんなわけで、習慣に関する本書『人生を変える習慣のつくり方』(グレッチェン・ルービン著)を読んでみました。
■ アウトラインがしっかりしているので、全体の流れが俯瞰しやすい
全部で5部(パート)に分かれており、それぞれのテーマでいくつかの章が構成されています。いかにも英語圏の研究者が書く実用書らしい、しっかりとしたアウトラインが組まれていて、自分が必要な部分からでも読むことができるようになっています。
特に、章の終わりごとに「まとめ」と「Take Action(取るべき行動)」が完結にまとめられていて、再読の際にも概要がつかみやすい構成でした。
一例を挙げれば、
章のタイトル:「リスト化」すれば9割はできたも同然
まとめ:大きな目標や長期にわたる習慣には「小さな一歩」、期間が決まっているものには「大きな一歩」が効果的。
行動:習慣にしたいのになかなかできなかった行動を、「いますぐ」リストアップしてみる〜
このようになっています。
■ 著者が「アップホルダー」であることが、ほんの少し説得力に欠ける
本書では、習慣に対する人間をタイプ分けしており
・アップホルダー(約束を守る人)は、自分で設定した目標と、他人からの依頼の両方に応えられるタイプ
・クエスチョナー(疑問を持つ人)は、自分が実行するに値すると判断したことは着手できるというタイプ
・オブライジャー(義務を果たす人)は、他人から与えられた締め切りや課題は実行できるが、自ら設定した目標は先延ばししがちなタイプ
・レブル(抵抗する人)は、習慣そのものに疑問を持ち「何時に●●を行う」というルーティンに反発するタイプ
4タイプを見ればわかるとおり、良い習慣を身につけるのが簡単なタイプは「アップホルダー」ですが、このタイプは決めたことを反故にするのを嫌うケースもあるようです。つまりは「融通がきかない人」ということですね。
本書でも紹介されていますし、多くの方も経験的に理解できると思いますが、ほとんどの人は「オブライジャー」「クエスチョナー」のタイプであるため、ダイエットや学習、早起きなど、積み重ねることが重要な良い習慣を身につけるのが難しいとされています。
著者のグレッチェン・ルービン氏http://gretchenrubin.comは、自らを「アップホルダー」として認識しており、本書の中でも公私共にハードワーカーの傾向にあることを紹介していました。
わたしは、過去を振り返ると「オブライジャー」タイプで、対価の有無にかかわらず他社・他者から依頼された仕事は完了できるのに、自分で企画したプロジェクトは上手く進まない。ということが多かったように思います。
そのため「オブライジャー」に最適なプランが提示されていれば良かったのですが、「読書会に参加しよう」といった、割りとありきたりの答えが書かれており、もう少し深く突っ込んだ説明が欲しかったところです。
ただし、自分が「オブライジャー」であると自覚できた点は非常に有益でしたし、
>オブライジャーが良い習慣を維持するためには、「周囲の手本」という役割や責任が必要だ。
という部分からは、新しい視点を得ることができました。
■ 【まとめ】自分のタイプを見極めれば、問題の多くは解決する
「クエスチョナー」は、(科学的に正しいかどうかは別にして)その人が納得できる材料をそろえれば良い習慣が身につく。「レブル」には、誰もやったことがない「未開拓」というエサが有効。など、ほかにもたくさん参考になる部分がありました。
ルービン氏は、過去の著作『人生は「幸せ計画」でうまくいく!:http://amzn.to/2i68RAy』がベストセラーになったこともあり、定期的に「人生計画」や「小さな変化が良い結果を生む」ことに関して講演を行っているようです。
本書でも、それらの経験を踏まえて具体的な事例がたくさん紹介されていました。
>先延ばしが起こるいちばんの原因は「疲れすぎていること」
として、睡眠や休息の重要性を解説するほかにも――、
>小さな達成感を得ることで、自分にはやり遂げる力があるという自信もつく
この「達成感」は人によって違うため、安易に人真似をせず自分のタイプや習性を過去の経験から振り返ることが重要だと説いています。
このあたりが、安易に「トイレを掃除すれば何もかも上手くいきます」みたいな、怪しい自己啓発本もしくは、占い本とは違うところでした。
Kindleなら本体価格に対して、数パーセントのポイントが付きます。わたしの場合は実質 1344円で購入できました。ほかにも楽天のコボだったら定期的にクーポンも発行されているので、同じような価格で手に入ると思います。
どちらにしても、内容が十分に詰まっているので、値段に対して十分に満足できる結果となりました。
ダイエットや語学学習の習慣などの「良い習慣」を身につけるだけでなく、SNSなどにダラダラとアクセスしてしまう「悪い習慣」を止める方法も示唆されており、今年こそは「少し新しい自分」を創ってみたい! そんな人にはオススメの一冊です。